AI活用が本格化する中、人事の最前線では「技術」だけでなく「勝てる組織」への注目が高まっています。2025年2月に開催されるカンファレンスに登壇する原辰徳氏の言葉から、野球のマネジメントがなぜ今のオフィスに必要とされるのか、AI時代の新しいキャリア観を探ります。
2025年、AIの導入が企業で本格化する中、ある意外な人物が人事の未来を語ります。東京ミッドタウン八重洲で開催される大規模な人事カンファレンス「PeopleX Dream Conference」の基調講演に選ばれたのは、プロ野球・読売ジャイアンツの前監督である原辰徳氏です。最新テクノロジーの議論が中心だった人事イベントが、なぜ今、球界のレジェンドを招くのでしょうか。
市場の動向が示しているのは、AIによる業務効率化が進む一方で、最終的な企業の競争力は「人間をどう動かし、組織をどう活性化させるか」という、本質的な組織論に改めて注目が集まっているという事実です。このカンファレンスでは、AIがどれほど進化しても代替できない、勝負どころでの決断力や、多様な個性が集まるチームを一つにまとめる力が議論の中心となっています。
この変化は、バックオフィスで働く一般事務や、顧客の複雑な感情に向き合うカスタマーサポートに従事する方々にとって、非常に大きな意味を持ちます。定型業務のAI化が進む今、個々のスキルをどう組み合わせて成果を出すかという、いわば打順や守備位置を決めるようなマネジメント能力が、あらゆる職種で求められ始めているからです。
私たち編集部は、これを「マネジメントのスポーツ化」と捉えています。かつての人事は管理が主な役割でしたが、これからは監督やコーチのように、メンバーのモチベーションを高め、適材適所で個性を発揮させる役割へと進化します。AIは優れた道具ですが、勝利への執念やチームの絆までは作れません。結局、最後は熱量のある人間が介在することで、組織は真の力を発揮するのです。
よくある誤解は、AIが普及すればリーダーは不要になるという考えです。実際にはその逆で、AIが提示する膨大なデータや選択肢の中から、誰を信じてどの道を進むかを決める人間的なリーダーシップの重要性は、かつてないほど高まっています。判断をAIに任せきりにする組織は、個性を失い、結果として市場での競争力を失うことになりかねません。
まずは自分の今の仕事を単なるタスクではなく、チームという「打線」の中での役割として捉え直してみましょう。自分がどの場面で代打として、あるいは守備の要として貢献できるかを言語化することが、AI時代を生き抜くための自分自身の価値を高める第一歩になります。
次に、周囲のメンバーが得意とする「データには表れない強み」を見つける習慣をつけてください。AIは過去の成果を数値化できますが、その人が持つ意外な適性や、周囲に与える心理的な影響までは見抜けないことが多いからです。仲間を観察し、その潜在能力を引き出す力は、AI時代において最も強力な武器になります。
最後に、自分自身を特定の職種に当てはめるのをやめてみることです。野球選手が走攻守すべてを磨くように、専門スキルに加えてコミュニケーションや企画力といった複数の要素を掛け合わせ、自分だけのプレースタイルを確立していく意識が、これからのキャリア形成では不可欠になります。