OpenAIが採用時の米国人労働者に対する差別を巡り、米司法省(DOJ)に約3.2億円(320万ドル)を支払うことで合意しました。永住権取得プロセスを悪用し、あえて米国人に応募させないよう「郵送のみ」の受付にするなど、最先端企業とは思えないアナログな手法での「排除」が浮き彫りになっています。キャリアを守るために私たちが知るべき、企業の裏側の実態を解説します。
最先端の知能を生み出す企業が、最も基礎的な公平性でつまずきました。ChatGPTで世界を席巻するOpenAIが、採用選考における差別をめぐり、米国司法省(DOJ)に対して約320万ドル、日本円にして約3.2億円以上の和解金を支払うことで合意したことが、2026年8月に明らかになりました。世界中の優秀な人材を惹きつけるAIの旗手が、自国の労働者を不当に排除していたという事実は、テクノロジー業界全体に衝撃を与えています。
米司法省の調査によると、OpenAIとその子会社Statsig Inc.は、2023年6月から2025年4月までの間、特定の職種において一時就労ビザを持つ外国人を優先し、米国人労働者(市民、永住権保持者、難民、亡命者)を不当に扱っていたことが判明しました。具体的には、外国人の永住権スポンサーに必要な「PERM(労働証明)」プロセスにおいて、意図的に米国人が応募しにくい状況を作り出していたと指摘されています。これは米国の移民・国籍法(INA)に抵触する行為です。
驚くべきはその手法です。通常、OpenAIの求人はオンラインで簡単に応募できますが、特定の職種ではあえて「オンライン応募不可・郵送のみ」という制限を設けたり、深夜のラジオ番組で細々と求人広告を流したりすることで、米国人労働者の目に触れないよう、あるいは応募のハードルを上げるような運用を行っていました。同社は否定していますが、司法省はこれらを「意図的な差別」と見なしています。
この問題は、グローバル企業への転職を目指すエンジニアや、事務職、カスタマーサポート職を含むすべての求職者にとって他人事ではありません。特に、最先端のAI企業であればアルゴリズムによって公平に判断されているはずだという期待を持ちがちですが、実態は依然として組織の古い慣習や、特定のビザ制度を維持したいという経営上の都合に左右されていることが露呈しました。外資系企業への応募を検討している層は、企業のブランド力だけでなく、その採用プロセスが透明かつ適法であるかを冷静に見極める必要があります。
AfterAI編集部としては、今回の事態に強い危機感を抱いています。AIが人間を評価し、選別する仕組みを開発している企業そのものが、採用段階で「あえてアナログなハードルを設ける」という手法で偏った判断を下していたという皮肉は見逃せません。これは単なる法的ミスではなく、急成長する企業がコンプライアンスを軽視し、自社の都合を優先した結果と言えます。AI時代において選ばれる側になる私たちは、ツールとしてのAIを使いこなす以上に、その背後にいる組織の倫理観やバイアスを警戒すべきです。
ここでよくある誤解を一つ解消しておきましょう。それは、世界トップクラスの企業なら採用プロセスも最新で最も公正なはずだという思い込みです。実際には、今回のOpenAIのケースのように、特定の手続きを有利に進めるために意図的に不自然な条件を設定するリスクが存在します。有名な企業だからといって、必ずしも一人ひとりの応募者を正当に評価する体制が常に整っているとは限らないのが、現代の労働市場のリアルです。
もしあなたが今、新しいキャリアを模索しているなら、企業の採用ページで「応募方法」に不自然な差異がないかを確認することから始めてください。特定のポジションだけ郵送を求められたり、詳細な選考基準が不明確な場合は、注意が必要です。
最後に、特定のツールやブランドに依存しすぎないキャリア形成を意識してください。AIの進化は劇的ですが、それを使う側、育てる側の人間は、依然として間違いを犯す存在です。特定の企業が掲げる「人類への貢献」といった言葉を鵜呑みにせず、当局の調査結果などの客観的な情報から企業の体質を判断する目を養うことが、AI時代を生き抜く自衛手段となります。