AIの影響を受けやすい職種で、全体の雇用数は増えたものの20代の就業者だけが減少しているという衝撃的なデータが韓国で明らかになりました。AIが「若手の仕事」を代替し、ベテランの生産性を高める一方で、新人の入り口が狭まっている現状を解説。日本でも起こり得る「スキルの階段の消失」に備え、若手がキャリアを守るための具体的な行動指針を提示します。
AIが普及すると仕事がなくなると言われて久しいですが、現実はもっと複雑で残酷な動きを見せているようです。韓国銀行(中央銀行)が発表した最新の労働市場分析では、AIの影響を強く受ける職種において、全体の雇用者数は増えているにもかかわらず、20代の就業者だけが減少しているというデータが示されました。AIはベテランの右腕として機能する一方で、若手の門戸を狭めている可能性が浮き彫りになっています。
2019年から2022年にかけて韓国で実施された調査によると、AIに代替されやすいとされる事務職や専門職などのカテゴリで、全体の雇用数は約110万人増加していました。しかし、年齢別に内訳を見ていくと、他の世代が増加または横ばいであるのに対し、20代だけが約13.2万人も減少していたのです。これは、AIが仕事を完全に奪うのではなく、これまで新人が担当していた定型的な業務を肩代わりした結果、企業が若手を新規採用する必要性を感じにくくなっていることを示唆しています。
この影響を特に受けているのは、一般事務職やカスタマーサポート、そしてデータ入力などの初歩的なホワイトカラー業務です。これらは従来、社会人としての基礎を学ぶためのエントリーレベルの仕事として機能してきました。しかし、こうした下積みの仕事がAIに置き換わることで、若者が組織に入り込み、スキルを磨くための最初のステップが消失しつつあるのが現状です。
AfterAI編集部では、この現象を「スキルの階段の消失」と捉えています。AIによって熟練者の生産性が極限まで高まれば、少数のベテランだけで業務が回るようになり、教育コストのかかる若手を育てる動機が企業から失われていきます。この傾向は日本においても決して他人事ではありません。雇用が減っていないから大丈夫だと楽観視するのではなく、世代間で不平等な影響が出ている事実に目を向けるべきです。私たちは、AIが仕事を奪うことよりも、AIが若者の成長機会を奪うことの方をより深刻に警戒すべきかもしれません。
AIが普及すると全ての人間が失業するという説は、今のところ正しくありません。現時点で起きているのは総崩れではなく、スキルの低い層や経験の浅い層が弾き出される選別です。仕事そのものは存在し続けても、その席に座るためのハードルが劇的に上がっているというのが実態です。この変化を正しく認識することが、誤った不安を解消し、現実的な対策を講じるための第一歩となります。
まずは、自分が担当している業務の中でAIに丸投げできる部分と自分にしかできない判断を明確に切り分ける習慣をつけましょう。AIが出した答えをそのまま使うのではなく、その結果に至るプロセスを理解し、修正や指示ができる能力を高めることが重要です。ツールの使い手ではなく、AIを使いこなすディレクターとしての視点を持つことが、若手世代が生き残るための最低条件になります。
次に、デジタル空間だけで完結しないフィジカルな価値に注目することをお勧めします。安川電機の小笠原会長は、製造業の現場などでAIと物理的な動きを融合させる「フィジカルAI」の領域は、今後5000億〜2兆円規模の勝機がある市場になると予測しています。画面の中のデータ処理だけでなく、現実世界の複雑な課題や対人コミュニケーションなど、AIが苦手とする現場感覚を磨くことは、将来にわたって強力な武器になります。
最後に、組織の中での調整役や橋渡し役としてのスキルを意識的に磨いてください。どれほどAIが進化しても、異なる部署間の利害を調整したり、クライアントの曖昧な要望を具体的なプロジェクトに落とし込んだりするのは人間の役割です。こうした高度なソフトスキルを伴う業務は、AIの影響を受けにくいだけでなく、希少価値がさらに高まっていくはずです。