AIによる採用業務の自動化が注目される中、現場では単なる効率化にとどまらない「葛藤」が生じています。2026年10月14日開催の「採用ウルトラキャンプ」に登壇するラクスルやSecureNaviなどの企業が明かした実態から、AI導入がもたらす人間との調整や新たな課題、変化する事務・採用職の役割を解説。米国でAIを「スーパー・インテリジェンス(SI)」と再定義する大統領令が出るなど期待が高まる一方、現場の泥臭い試行錯誤と人間ならではの価値が浮き彫りになっています。
AI採用の現場では、単なるスピードアップだけではない実態が浮かび上がっています。2026年10月14日に開催される大型カンファレンス「採用ウルトラキャンプ 2026」への登壇が発表されたラクスルやSecureNavi、フォワードの最新セッション予告では、AI導入に伴う現場の生々しい葛藤がテーマとなりました。米国政府が10月6日付の大統領令でAIを「スーパー・インテリジェンス(SI)」と呼称するよう指示を出すほど技術への期待が高まる一方で、日本の採用最前線では人間とシステムの間で揺れるリアルな試行錯誤が続いています。
登壇各社が提示した実態が示したのは、AIを採用に導入しても、すぐにすべての選考が自動化され、担当者が楽になるわけではないという事実です。むしろ導入初期には、AIが出した判断を人間がどのように評価し、組織の文化とすり合わせるかという、これまで以上に精度の高い調整能力が求められます。効率化の裏側では、AIのロジックと現場の感覚のズレを修正し続ける泥臭いプロセスが不可欠となっているのです。
この変化は、特に採用実務を担う人事担当者や、候補者との連絡やスケジュール管理を支える一般事務の仕事に大きな影響を与えます。単純な履歴書のスクリーニングや定型的な連絡業務はAIに移行していく一方、担当者にはAIが提示した候補者の可能性を深掘りし、自社に本当にマッチするかを最終判断する役割が強く求められるようになります。事務的な処理能力よりも、データに基づいた意思決定をサポートする管理能力への転換が起きています。
編集部の視点として、今回の事例はAIに対する過度な幻想を打ち消す重要な示唆を含んでいると考えます。AIがどれほど優れた知能(SI)を持ったとしても、組織に誰を迎え入れるかという最終的な責任は人間が負い続けます。そのため、AI導入によって仕事がなくなるのではなく、人間が担当すべき領域がより本質的な見極めや動機づけといった高度なコミュニケーションへシフトしているのが実情です。効率化を急ぐあまり、採用の質を左右する人間的な手触り感を損なわないバランス感覚こそが、これからのキャリアに求められる武器になります。
よくある誤解として、AIを導入すれば選考の偏りがすぐになくなり、客観的な評価が担保されるという思い込みがあります。しかし実際には、AIの判断基準を作るのも、その結果を運用するのも人間です。現場での葛藤が生じるのは、まさにこの主観と客観のバランスを整えようとする健全なプロセスであり、AI任せにすることが正解ではないことを示しています。
今日からできることとして、まずは自分の業務のなかでAIに任せられそうな部分と、自分にしかできない判断を明確に切り分けてみてください。手順が決まっている作業はAIの得意分野ですが、会社の雰囲気やチームの相性を見極めることは人間にしかできません。この境界線を意識するだけで、ツールに使われるのではなく、ツールを使いこなす側への第一歩を踏み出せます。
次に、最新のAIツールがどのように進化しているか、技術的な詳細よりも活用事例に注目して情報収集を行ってください。今回登壇する企業のように、成功事例だけでなく苦労しているポイントを知ることで、実務に即した具体的な活用イメージが持てるようになります。派手な宣伝文句に惑わされず、等身大の活用法を探ることが大切です。
最後に、対人コミュニケーションのスキルを意識的に磨き直すことをお勧めします。AIによって事務作業から解放された時間は、候補者との深い対話や社内の意思決定者との調整に充てるべきです。相手の真意を汲み取り、心を動かす提案ができる力は、AI時代において最も代替が難しく、かつ価値が高まり続けるスキルとなるでしょう。