日本のIT人材不足は深刻で、生成AIの普及が求めるスキルのハードルをさらに押し上げています。国内だけで人材を確保することはもはや困難であり、日本とベトナムが産学連携で「高度IT人材」の育成に乗り出しました。安価な労働力としてではなく、共にAI時代を生き抜くパートナーとして日越が手を組む現状と、ビジネスパーソンが備えるべきグローバルな視点について解説します。
日本のIT人材不足は、経済産業省の試算によると2030年に最大で約79万人に達するとされていますが、生成AIの急速な普及がこの状況をさらに複雑にしています。単にコードが書けるだけの人材では通用しなくなり、AIを使いこなし、高度な設計ができる人材の確保は、もはや国内だけでは不可能な領域に突入しました。こうした背景から、日本とベトナムが産学連携で高度IT人材の育成に本腰を入れる動きが加速しています。
2026年9月18日に開催が決定した「ベトナム・日本 高度IT人材フォーラム」は、日本の産業界が抱く危機感の表れと言えます。これまでのオフショア開発のような安価な労働力の確保というフェーズは終わり、生成AI時代に即した高度なスキルを持つパートナーとしてのベトナムが注目されています。大学や企業が国境を越えて手を取り合うことで、教育カリキュラムの標準化や、実戦的なAI活用スキルの共有が急ピッチで進められようとしています。
この動きは、システム開発に関わるエンジニアだけでなく、企業のDXを推進する事務職やカスタマーサポートの現場にも大きな影響を与えます。AIを導入する際、その設計や運用を担うのが海を越えた高度な隣人になる可能性が高いからです。海外のエンジニアと連携してプロジェクトを回すスキルは、もはや特殊な能力ではなく、あらゆるビジネスパーソンに求められる標準装備になりつつあります。
AfterAI編集部としてこの現状を読み解くと、もはや「国内の若手が増えないから外国人に頼る」という消極的な視点では生き残れないことが分かります。ベトナムなどの新興国は、日本以上にハングリーに最新技術を吸収しており、AIスキルの面では日本を追い抜く勢いです。私たちが考えるべきは、仕事を奪われる心配ではなく、いかにしてグローバルなAIチームの一員として価値を発揮するかという点にあります。これからのキャリアでは、語学力以上に「AI」という共通言語を介して他国のプロフェッショナルと意思疎通する力が、生き残るための鍵となるでしょう。
よくある誤解として、海外との連携はコスト削減のためだけにあるという思い込みがあります。しかし、現在の実態は、コスト以上にスキルの「質」を求めての連携です。日本国内でAIに精通したシニアエンジニアを探すよりも、意欲的で最新教育を受けた海外の若手エリートと組む方が、プロジェクトの成功率が高まるという逆転現象が起き始めています。
まずは、自分が担当している業務を「AIと海外チームで進めるならどうなるか」と想像してみることです。ドキュメントの英語化や、指示内容の明確化など、言語や文化の壁を越えて伝わる言語化能力(プロンプト思考)を磨くことが、AI時代のリーダーシップの第一歩になります。
次に、生成AIを単なる効率化ツールとしてではなく、共通のプロトコル(規約)として活用し始めるべきです。AIが生成するコードやテキストをベースに議論を進める習慣をつければ、国籍に関わらず、技術的な議論のスピードを劇的に上げることができます。
最後に、自分のキャリアの競合を「隣のデスクの同僚」ではなく「世界の高度IT人材」に設定し直すことです。彼らが何を学び、どのようなスピード感で動いているかを知るために、海外のテックニュースや今回のような国際フォーラムの情報に日常的に触れる習慣を持ちましょう。