パンデミックを契機に、企業は将来の事業停止を防ぐ「リスク管理」としてAIやロボットへの投資を加速させています。全米経済研究所(NBER)の研究が示す通り、特に対面や密接な環境を伴い、かつ技術的に自動化が可能な職種において代替が進む実態を分析します。私たちはこの「非接触化」という不可避な潮流にどう向き合うべきでしょうか。
「人間がそこにいなければならない」という事実が、経営上のリスクと見なされる時代が来ています。ウイルスに感染するリスクが高い職場で働く人ほど、その業務がAIやロボットに置き換わる可能性が高まっているという研究結果が注目を集めています。
全米経済研究所(NBER)がパンデミック初期に発表した調査(Chernoff & Warman, 2020)によれば、企業は将来のパンデミックによる事業停止を防ぐための「防衛策」として、自動化への投資を強めています。かつての自動化は主に生産性の向上やコスト削減が目的でしたが、現在は感染症などの緊急事態でも業務を継続するための「レジリエンス(復元力)」の確保が強力な動機となっているのです。
この調査が強調しているのは、単に「感染リスクが高い」だけではなく、「感染リスクが高く、かつ技術的に自動化が可能である」という2つの条件が重なった職種で、代替スピードが飛躍的に加速しているという点です。例えば、物理的な書類の受け渡しが伴う事務職や、不特定多数との接触が避けられないカスタマーサポート、定型的な接客業務などがそのターゲットとなっています。一方で、同じエッセンシャルワーカーでも、高度な対人スキルや複雑な判断を伴う医療・介護などの職種は、感染リスクが高くとも自動化は容易ではないと分析されています。
AfterAI編集部としてこの状況を捉えると、ある種の構造的な変化を感じざるを得ません。パンデミック下で社会を支えた現場の人々の一部が、その「対面・密接」という特性ゆえに、皮肉にもAI化の優先対象となっているからです。これは単なる効率化を超え、企業が「感染症に左右されない強固なシステム」を構築しようとする、戦略的な経営判断の結果と言えるでしょう。
よくある誤解として、自動化は「単純な力仕事」から進むと思われがちですが、実際には「接触を伴う定型作業」から順にデジタル化の波に飲まれています。どんなに重要な事務作業であっても、それが物理的な出社や対面を前提としているのであれば、企業の事業継続計画(BCP)の観点から、AIによるリモート完結型システムへの移行が優先されるのです。
読者の皆さんは、自分の現在の業務を「物理的な接触の多さ」と「手順の定型化」という2つの視点から見つめ直してみてください。もし両方の度合いが高いのであれば、その仕事は企業の「非接触化」戦略の対象となっている可能性があります。しかし、これは悲観すべきことだけではありません。自動化されたシステムを管理し、テクノロジーを武器に「ウイルスに左右されない体制」を運用する側には、これまでにない新たなチャンスが生まれています。
これからのキャリアを守る道は、現場での実務経験をベースにしながら、AIや自動化ツールを「使いこなす側」へシフトすることです。勤務先が「レジリエンス」や「非接触化」という言葉を使い始めたら、それは変化のサインです。その変化を新しい技術環境に適応するための学習機会として捉えることが、これからの不確実な時代を生き抜くための鍵となるでしょう。