AIでES作成、人事は悲鳴? 採用現場で進む「AI vs AI」の不毛と「対面回帰」の正体

どういうこと?
?
  • 就活生のAI利用により、採用担当者が「AI作文」の選別という新たな業務に忙殺されている
  • 文章の完成度で差別化が難しくなり、書類選考よりも面接など対面での評価が重視される傾向にある
  • AIによる効率化が、逆に企業側の確認コスト増大と選考プロセスの長期化を招いている

この記事は約5分で読めます。

生成AIの普及により就活生がエントリーシート(ES)作成を効率化させる一方で、採用現場ではAIが書いた無個性な作文の選別に追われる「逆転の疲弊」が起きています。書類選考による見極めが困難になる中、ロート製薬のようにESを廃止する企業も現れるなど、採用のあり方は「文章の完成度」から「リアルタイムの思考プロセス」へと急激にシフトしています。

誰もが生成AIを使って履歴書やエントリーシート(ES)を短時間で作成できるようになった今、採用の現場ではこれまでにない混乱が起きています。就活生側が効率化の恩恵を享受する一方で、受け取る企業側には、AIが生成した似通った「完璧すぎる回答」が大量に送りつけられる事態となりました。効率化が進んだはずの裏側で、読み手である人間の負担が激増するという皮肉な状況が生まれています。

日経BOOKプラスの報告によると、生成AIの普及によって、採用担当者は膨大な数の「AI作文」を読まされる選別作業を強いられています。かつては文章の構成や言葉選びから、応募者の志望度や論理的思考力を推し量ることが可能でした。しかし、現在は誰もがAIで平均点以上の回答を瞬時に用意できるため、定番の「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」などの設問は事実上無効化されており、書面だけで応募者の本質を見極めることが極めて困難になっています。

この変化は人事担当者だけでなく、書類選考が入り口となるあらゆる職種の採用現場に波及しています。特に大手企業では、AIが書いた文章を人間が読み、その真偽を確かめるためにまた別のAIツールを導入して評価し直すといった、いわば「AI対AI」の追いかけっこに追われるスタッフが増えています。選考のスピードを上げるはずのテクノロジーが、旧来の選考フローに留まる現場においては、結果として新たな確認コストを強いているのが実情です。

AfterAI編集部としては、この状況を「文章力によるスクリーニングの終焉」と捉えています。米Meta社のマーク・ザッカーバーグ氏は、2026年8月に発表した声明で「AIは個人の能力を拡張する存在になる」と楽観的な展望を示していますが、採用現場においてはその「拡張された文章」が逆に個人の透明性を奪う皮肉を招いています。推敲のプロセスが熱意の証明にならなくなった今、企業側は「書かれた内容」よりも、その場での受け答えやアドリブ力といった、替えのきかないアナログな能力をより重視せざるを得ません。

実際、一部の先進的な企業では採用プロセスの根本的な刷新が始まっています。例えばロート製薬は、AIによるESの均質化を受け、書類選考を廃止して最初から対面で対話する「エントリーミート」を導入しました。これにより、AI作文の真偽を疑う不毛なコストを削減し、結果として約100時間の業務効率化に成功したと報じられています。このように、AI時代の採用は「最低限の資格確認」としての書類から、対面での実技や思考プロセスを確認する方向へと回帰しつつあります。

今日からできることとして、AIをES作成に使う際は、事実関係の整理や構成の補助に留め、必ず自分にしか語れない具体的なエピソードや独自の感情を肉付けしてください。AIの出力をそのまま提出することは、プロの目から見れば「無個性なノイズ」として察知され、かえって評価を下げるリスクがあることを自覚すべきです。

次に、書類選考のハードルが実質的に形骸化する一方で、面接の難易度が上がることを覚悟しておく必要があります。AIに頼り切って書類を作ると、面接で深く掘り下げられた際に、自身の実際の思考とAIの生成した論理に齟齬が生じ、信頼を失う原因になります。自分の書類に書かれた内容を、自分の言葉として完全に血肉化できているかを確認する時間を、これまで以上に確保すべきです。

企業側においては、採用基準を「成果物の美しさ」から「思考のプロセス」へとシフトさせることが急務です。応募者とのカジュアル面談を早期に設定したり、その場で特定の課題について意見を求めたりするなど、生成AIでは代替できない「リアルタイムの思考力」を確認する機会を意図的に設ける工夫が、採用ミスマッチを防ぐ唯一の道となるでしょう。

関連する求人

職種は記事ごとに設定し、表示地域は閲覧中の位置から推定しています。

求人情報提供: Careerjet

Copyright © AfterAI. All Rights Reserved.

メールマガジンを配信中

メールマガジンを配信中

AI時代の雇用動向、リスキリング、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

メールマガジンで得られること

  • 人気記事をメールで定期配信!
  • AI・失業・雇用の最新動向の把握
  • 雇用や伸びている業界や職種を発信

関連記事