AI導入が進む大企業でも、実は7割以上のユーザーが「別画面へのコピペ」で運用しているというアナログな実態が判明しました。理想の自動化とは程遠い「手動のAI利用」が現場の負担となっている一方で、MetaのようにAIへの置き換えを加速させる動きも。現状の課題と、事務職やサポート職が生き残るための具体的なアクションを解説します。
最先端の生成AIを使いこなし、業務を爆速化させているように見える大企業の社員たち。しかしその実態を覗いてみると、意外なほどアナログな光景が広がっています。ある調査では、AIが最も定着している層ですら、その71.5パーセントが「別画面を開いてデータをコピペする」という手作業を繰り返していることが明らかになりました。AIが魔法のように全てを自動化してくれるというイメージと、泥臭い現場の運用には、今なお大きな乖離が存在しています。
この調査結果は、大企業において生成AIが個人のツールとしては普及しているものの、企業の基幹システムや業務フローに深く組み込まれていない現状を浮き彫りにしています。多くのユーザーは、社内の資料を一度コピーし、ChatGPTなどの別ウィンドウに貼り付け、そこで得た回答をまた元の資料やメールに貼り直すという作業を行っています。AI導入によって思考の時間は短縮されたかもしれませんが、情報を移動させるための「クリックとドラッグ」に多くの時間が費やされているのです。
こうした「コピペ運用」の弊害を最も受けているのは、一般事務職やカスタマーサポート職の方々です。例えば、顧客からの問い合わせ内容をAIに要約させ、返信案を作らせる際、複数のツールを行ったり来たりする手間がボトルネックになります。本来であれば、顧客管理システムの中でボタン一つで完結すべき作業が、今なお「人間による運搬」を必要としています。これは一見すると効率化に見えますが、本質的な業務改善の入り口に立ったに過ぎません。
AfterAI編集部としては、この「コピペの壁」こそが、これからのキャリアの分岐点になると見ています。一方でMeta(メタ)のように、AIへの投資を加速させ、既存の仕事をAIに置き換える動きを強める企業も増えています。経営層が求めているのは「AIを道具として使う作業員」ではなく、AIをプロセスに組み込んで「業務そのものを消し去る設計者」です。ただ指示を出して貼り付けるだけの作業に甘んじていては、AIによる人員削減の波に真っ先に飲み込まれるリスクがあります。
よくある誤解として「AIを毎日使っていれば、それだけでリスキリングになる」という思い込みがあります。しかし、外部のAIチャットと既存業務を往復しているだけでは、それはかつての電卓やワープロの延長線上のスキルでしかありません。真に価値があるのは、その往復作業をどうすれば自動化できるか、あるいはAIを使うことで従来の業務フローをどう破壊できるかを考え、実行することにあります。
今日からできることとして、まずは自分の業務における「コピペの回数」を可視化することから始めましょう。一日のうちに何回、異なるウィンドウ間で情報を移動させたかを数えてみてください。その回数が多いほど、そこには自動化のチャンスが眠っており、同時にあなたの仕事がAIに丸ごと置き換えられる可能性が高い領域であるという警告でもあります。
次に、自分一人の工夫で終わらせず、チーム内でコピペを減らすための簡易的なツール活用を検討してください。ブラウザの拡張機能や、既存ツールの連携機能(コネクタ)を使うだけでも、手作業の多くは削減できます。ツールを使いこなす段階から、ツール同士を「つなげる」段階へ意識をシフトすることが、社内での希少価値を高める近道になります。
最後に、AIが出力した情報の「コピペ」をやめ、自分の言葉で価値を加える訓練を徹底してください。AIが作った文章をそのまま貼り付けるのではなく、現場の文脈や相手の感情を汲み取った「最後の一押し」を加えること。この、コピペの先にある人間特有の判断や調整こそが、AI時代に最後まで残る聖域であり、私たちが磨き続けるべき本質的なスキルなのです。