27卒の就活生の9割以上がAIを活用している実態が判明しました。ES作成などの効率化が進む一方で、最も苦労しているのはAIで代替しにくい「スケジュール調整」という意外なボトルネックが浮き彫りになっています。AIが標準装備となった時代のキャリアにおいて、効率化の先にある人間ならではの調整力の重要性について考察します。
就職活動の大詰めを迎えている2027年卒業予定(27卒)の学生の9割以上が、すでに生成AIを何らかの形で活用しているという実態が明らかになりました。かつては一部の先進的な学生のツールだったAIは、もはや就活の標準装備といえるフェーズに突入しています。しかし、その一方で、彼らが最も苦労しているのはAIが得意とする文章作成ではなく、意外にもアナログな調整作業でした。
最新の調査結果によると、就活で最も大変だったこととして32.4パーセントの学生が「スケジュール調整」を挙げています。自己分析やエントリーシートの作成においてAIの活用が定着した結果、アウトプットを生み出す時間は大幅に短縮されました。しかし、企業との面接日時をすり合わせる、学業やサークルとの兼ね合いをつけるといった人間同士の細かな調整は、依然として学生たちの大きな負担となっています。企業側も採用プロセスへのAI導入を進めていますが、双方の間に介在する生身のコミュニケーションコストが浮き彫りになった形です。
この傾向は、社会に出てからの一般事務やカスタマーサポートといった職種にも大きな示唆を与えます。自治体の事例として、金沢市がAI検索やRAG型生成AI「Cogmo Enterprise 生成AI」を導入して市民への情報提供を強化し、職員の運用負担を軽減しようとしている動きがあります。単純な回答や検索といった定型的な業務は、自治体の窓口業務であってもAIが肩代わりする時代です。しかし、就活生が今まさに直面した調整業務と同様に、複雑な人間関係が絡む現場の運用や、マニュアル化できないイレギュラーな判断は、今後ますます価値を持つスキルになります。
AfterAI編集部としては、今回の調査結果をAIの活用が一般化したことで、次の課題が明確になった兆候と捉えています。文章を作る、アイデアを出すといったクリエイティブな初期工程はすでにAIの領域です。一方で、スケジュール調整が最大の課題として残っている事実は、デジタルと現実の接点にこそビジネスの停滞が生じていることを物語っています。事務職であれば、単に情報を整理するだけでなく、複数の関係者の意図を汲み取って物事を円滑に進めるディレクション能力が、AI時代の強力な生き残り戦略になるでしょう。
よくある誤解として、AIを使えばあらゆる仕事のスピードが上がり、個人の忙しさがすぐに解消されるという思い込みがあります。実際には、今回の学生たちのように、AIで効率化した分だけ別のボトルネックが際立ってしまう現象が起きています。効率化によって生まれた時間を、どの課題に充てるべきかを見極める力こそが、今のキャリア形成には欠かせません。ツールを使いこなす能力と同じくらい、ツールでは解決できない泥臭い調整をやり切る力が求められています。
まずは、自分の業務の中でAIが解決しやすい論理的なタスクと、人間同士の調整が必要な情緒的なタスクを切り分けて整理しましょう。メールの代筆はAIに任せても、その後の人間関係を損なわないためのフォローや細かな配慮は自ら行うといった、役割分担の意識を今日から持つことが大切です。
次に、自治体の事例のように、最新の検索AIやRAGといった技術がどのような仕組みで業務を効率化しているのかを、一人の利用者として体験してみることをおすすめします。技術の詳細を知る必要はありませんが、AIができることの限界を知ることで、自分が担当すべき「人間にしかできない価値ある仕事」がより明確に見えてくるはずです。
最後に、調整能力を磨くために、あえて異なる立場の人々が関わるプロジェクトやコミュニティに顔を出してみましょう。AIには真似できない、利害関係の複雑な調整や合意形成の経験を積むことが、将来的にどの業界へ進んでも重宝される汎用的な武器となります。効率化の先にある人間関係の構築にこそ、これからの仕事の醍醐味があります。