AIで作られた低質なコンテンツ「スロップ」が職場で問題視されています。米スタンフォード大学の研究では、こうした「丸投げ」の文章が受け手の信頼を著しく損なうことが判明。効率化の裏で「手抜き」と見なされないための、プロフェッショナルなAIとの向き合い方を解説します。
AIを使って作成された中身のないコンテンツを指す「スロップ(slop)」という言葉が、いま世界中で定着しています。かつてメールの「スパム」が嫌われたように、現代では安易に生成AIで作成された心のこもらない文章や画像が、受け手を不快にさせる新たな公害となりつつあります。米メリアム・ウェブスターが2025年の「今年の言葉(Word of the Year)」に選出したことからも、この問題の深刻さが伺えます。
実際、BBCなどの報道では、個人の誕生日カードをAIに書かせるような行為に対し、受け取った側が「手抜きだ」と強い拒絶反応を示すケースが報告されています。また、スタンフォード大学とBetterUp Labsが2025年に発表した調査(Harvard Business Review掲載)によれば、職場でこうした低質なAI生成物(ワークスロップ)を受け取った人の約42%が「送り手への信頼が低下した」と回答しています。AIスロップとは、単なる間違いが多い情報ではなく、人間の意図や感情が欠落した、いわば情報のジャンクフードのような状態を指します。
この問題が直撃するのは、一般事務職やカスタマーサポート、広報など、日常的に多くのテキストコミュニケーションをこなす職種です。定型文をAIに任せるのは効率的に思えますが、相手の状況に配慮が必要な場面でAIそのままの文章を送ってしまうと、これまでの人間関係が一瞬で崩れるリスクを孕んでいます。特に、謝罪や感謝、重要な提案といった熱量が求められる業務において、AIへの丸投げは「相手を軽視している」というメッセージになりかねません。
AfterAI編集部としては、この現象を「効率化の副作用」と捉えています。多くのビジネスパーソンがAIを使うようになった今、価値が急騰しているのは、AIが作ったものをそのまま出さない編集力と、そこに込められた独自の視点です。AIに下書きをさせること自体は否定しませんが、それを自分の言葉として磨き上げるプロセスを省く人は、今後「信頼できない人」として職場での居場所を失っていくでしょう。逆に、AIを使いこなしつつも、最後に血を通わせることができる人の希少価値は、これまで以上に高まっていくはずです。
よくある誤解として、AIを使っていることを隠せば問題ないという考え方がありますが、それは間違いです。現代の読者は、AI特有の言い回しや不自然な丁寧さに驚くほど敏感になっています。重要なのはAIを使ったかどうかではなく、そこに自分の責任と意志が介在しているかという点に集約されます。
今日からできることの一つ目は、AIが生成した文章の最初の一文と最後の一文を必ず自分の手で書き換えることです。定型的な挨拶ではなく、その相手と自分にしか分からない具体的なエピソードや今の天候など、文脈に即した一言を添えるだけで、スロップ特有の無機質さを打ち消すことができます。
二つ目は、AIが出した回答をそのままコピーして送信することを自分に禁じるルールを設けることです。どんなに急いでいても、一度自分の目を通し、余計な形容詞を削ったり、語尾を自分の口調に合わせたりする「一分間の編集時間」を設けてください。このひと手間が、あなたのプロフェッショナルとしての尊厳を守ります。
三つ目は、AIを使う目的を「完成品の作成」から「思考の壁打ち」へとシフトさせることです。AIに答えを書かせるのではなく、自分の考えを整理するためのヒントをもらうツールとして付き合うことで、アウトプットからあなたらしさが消えるのを防ぐことができます。
出典:
'Don't ask me to print your ChatGPT birthday card': Hitting back at AI 'slop' - BBC
https://www.bbc.com/news/articles/c1vw6n9m77yo
Workslop Is New, but It’s Already Costing Us - Harvard Business Review (2025/2026)
Copyright © AfterAI. All Rights Reserved.